きゃあ、きゃあと人々がざわめいている。
何だと思えば大通りの方に目立つ男女が一組。
ひとりはいかにもな騎士風の男で馬の手綱を握り、
もうひとりは男の引く馬の背に横向きに座ったレディ。
2人は周りに見せ付けるように大通りをゆっくりと進んでいく。
精悍な騎士と麗しのレディ。まるでおとぎ話に出てきそうな光景だな。
ふと、彼らの歩みが止まった。
男は女性に向き直り、腰を掴んで馬から下ろしてやった。
そして地面に片膝をついて彼女の手の甲にキス。
人々がさらにざわつく。もっぱら騒いでるのは女達だ。
その後すぐ男が立ち上がって唇にキスしたことでざわめきはさらに大きくなった。
この町での交流の中心たる中央広場の噴水前。
わざわざ一番目立つ場所で、よくやるなー。
「恥がないのかよアイツら。行こうぜ、レイン」
呆れながら呟いて、歩き出す。
なのに、後ろからは返事も、歩みだしてくる気配もない。
おや?振り返ってみるとレインはまだあの男女を見ていた。
「レイン?」
声を大きくして呼びかけるとようやくハッとしたように動き出した。
取り繕うように、足早にオレを追い抜いていく。
オレはその背を見つめてから、もう一度遠目のふたりをみた。
ふーん?
オレはにやりと笑ってレインの後を追った。
ぴったりと素肌と素肌が吸い付く。
二人とも風呂上りだけあってさらさらしてる。
さっきまで頭を拭いていたタオルがパサリと床に落ちた。
「おい、ゼロ」
「ん〜?」
「何やってんだよ」
「いや、まだ何もしないって」
「だったらとりあえず、下くらい履け」
「オレは別にいいぞ」
「オレがよくないんだよ!」
すごく危機感を感じる。
なのにゼロは「いいじゃん、いいじゃん」と笑うだけ。
「なあ、レイン。知ってるか?キスでもさ、する場所によって意味が変わってくるんだとさ」
「これに載ってた」と片手に持っていた本を見せてきた。
渋い藍色の背表紙に金の字で【百科辞書 Z】と書かれた分厚い本。
何をさっきから熱心に読んでいると思えば、辞書か。
「そういうもんがあるってのは知ってる」
「じゃあさ、その意味全部覚えるのに実践させてくれよ」
は?ついに頭の中まで筋肉になっちまったのかと疑った。
「実践…?」
「おう。だってさ、単語とか覚える時は声に出したほうがいいだろ。
それなら実際にしたらさらに覚えやすいだろ」
辞書を引くなんて、勉学に通じるやつがやること。
急に調べたいことがあるからと、ギルドの図書室へ本を借りに行ったものだから、
筋肉ばっかり鍛えてる筋肉バカのゼロにしては珍しすぎると思ってた。
やっぱり、バカはバカだ。
ふと、昼間に見た光景を思い出す。
「騎士にでもなるつもりか?」
「ならないとも限らないだろー?」
「無理だな」
「この世の中、何があるかわからないって」
「無理無理。おまえ、品があんまりにも無さ過ぎる」
「ははっ。当たってるけどさ、覚えとくだけでも得だろ」
片手を掴まれ手の平を上に向かされる。
唇が触れる感覚。ふわふわして、くすぐったい。
「手のひらにキス。意味は<お願い>」
「…了承はしてないぞ」
「でも悪い気分じゃないだろ?なあ、レイン」
「頼むよ」ともう一度、今度は反対の手の平にキスされる。
確かに、悪い気分じゃない。
くすぐったいけど、愛されてるって伝わってくる。
優越感。
「…そこまで言うんなら」
「ありがとさん」
ゼロは笑って頬にキスしてきた。
「<親愛の情>、で」
滑るようにゼロの唇が通り過ぎた。
前髪が掻きあげられる。
額に触れる感触。
「こっちが<あいさつ>な。
…おっと、まだ代表的なのしてなかった」
ふと、ゼロの腕が緩んで解放された。
オレをベッドに座らせると、ゼロは床に片膝を着いた。
イタズラを思いついたガキみたいに笑ってやがる。
オレの右手を大事そうに片手で握って手の甲を口元に寄せる。
「<尊敬>…。これってさ、もっと別の意味だと思ってたのにな」
「ヤマシイもんでも想像してたのかよ」
「ちがうちがう。もっとさ、ロマンチックなやつだよ」
にぃ、とゼロは笑う。
ゼロはオレの右手は握ったままで頭を下げる。
「どーよ?どこからどう見ても騎士だろ?」
「この世のどこ探しても素っ裸の騎士なんていねぇ」
「それもそうだなー」
腰にタオルを巻いただけのほぼ真っ裸の騎士は笑う。
それでもこの体勢が気に入ったのか、ゼロは動かない。
悪い気はしなけど、しつこいのは好きじゃない。
「ほら、さっさと次いけよ」
「おっ?ノってきた?」
「さあな」
一瞬意外そうに瞬いた青い瞳。
次の瞬間には嬉しそうに目じりが下がった。
ゼロは握ってた手に指を絡めて、ゆっくりと覆いかぶさってきた。
オレは抗わず、ゼロに任せた。
柔らかなシーツの感触が素肌の上半身にくすぐったい。
ゼロは空いているほうの手をオレの頭の横について、身を乗り出してきた。
「目つぶって。開けると痛いからな」
慎重に降りてくる顔がどこを目指しているのか察知して、
しっかりとまぶたを閉じた。
触れたのか、触れていないのか曖昧なほどの軽い接触。
確かにまぶたに感じたのは密かな震えと熱。
すぐに遠のいていった感覚に笑ってやった。
「緊張してんの?震えてた」
「ま、場所が場所だからさ。
何かあったら大変だろ。で、意味は……」
とたんにゼロの表情がおかしくなった。
まさか、な。
「意味は……えーっと」
「忘れた、のか?」
ゼロの笑みがさらに引きつった。
やっぱり、忘れてる。
というかここまで覚えられただけ、ゼロにしちゃすごい。
けど、できかけていた雰囲気が壊れていくのはしかたねぇよな。
「まった、今、思い出すから……確か、な……」
「…どんな感じだったんだ?」
「…しゅう…かい?違うな。えーっと、しゅう…けい?うーん?」
「難しい言葉、だろ?」
「ああ、難しかった気がする…。あー、まったまった」
うんうんとゼロは本格的に悩みだしてしまった。
つにはオレの上から退いてしまう。
辞書をもう一度、引けばいい話なのに。
でもこれ以上、雰囲気は壊したくないな。
まぶたにキス、か。
「バカ。しょ・う・け・い、だろ。」
「ん?あ……ああ、それだっ。<憧憬>だ」
しきりにゼロはそうだそうだと頷きを繰り返した。
だけど、ふと、不思議そうな表情でオレを見下ろしてきた。
「あれ?おまえ、キスの意味知ってんの?」
「いや、まぶたの<憧憬>しか知らない」
「なんでそんな難しいもんだけ?」
「それは…な」
何と答えればいい?
一瞬、頭の奥を過ぎていった金色の記憶。
正直に話してはいけない気がする。
雰囲気がさらに壊れそうだ。
「どうだっていいだろ。次、いこうぜ」
空いたほうの片手をゼロの頬に伸ばした。
雰囲気を再構築するための、オレからの配慮。
なのにゼロは腑に落ちないという表情で、みつめてくる。
伸ばした手を掴まれてしまう。
「まさか、他の誰かに教えられた?」
うっ…。
仕事上、嘘は得意なほうだと思ってたのに。
思い出してしまう長い長い金色の髪。
三日月のような笑みを浮かべた男の顔。
わずかにビクリと手が震えた。
ゼロの眉間に珍しくシワが寄った。
ああ、まったく……。バカ師匠。
バレちまったし、もう言っちゃっていいか。
「昔、師匠に教えられたんだよ…」
「なんでまた?」
「おまえ、憧憬はな…憧れるって意味なんだよ」
「で、まさかやってたわけ、ないよな?」
普段バカだバカだと思ってるのに、たまに鋭い発言をしてくる。
「こんな時だけ勘がよくなるなよな」
ゼロの眉間にシワが寄るだけでも珍しいのにな、
口がへの字になってやがる。
シーフとしての技術を教えてくれた我が師匠は、大変ナルシストな男だった。
自分史上主義で、世界でもっとも強く美しい男は自分だと思ってる。
師匠はいつも言う『俺を敬え、っというか崇拝しろ』って。
そんな師匠の思いつきで、憧憬の意味のキスを何度かやらされただけだ。
それにしても、どうしたもんか。
雰囲気ぶち壊しだし、続けないだろうし。
ああ、クソ。師匠の大バカ野郎。
突然、六感が危険を察知した気がした。
直後に、両手を力いっぱいベッドへ押さえつけられた。
「おいっ…」
片方の手首にキスされる。
「手首…意味は<欲望>っ」
唸るようにゼロが呟いた後、小さな痛みがした。
噛み付かれたのかと思った。
けど、ちがう。それほど荒々しかっただけだ。
ゼロがその手を引っ張り上げたおかげで手首が見えた。
赤い跡がついていた。
「…<キスマーク>もさ欲望って意味らしいぜ。自分のものだって主張するためのものだから、な…」
反対側の手首にも吸い付かれる。痛い。
オレだって大人しくなすがままになる気はない。
「おいっ、バカゼロ!何キレてんだよ」
「キレてるんじゃない……」
ゼロはオレの手首にくっついたまま、顔を上げない。
オレは仕方なく青髪に向かって怒鳴った。
「キレてるじゃねぇか!
言いたいことがあんのならさっさと言え!」
「…嫉妬してるんだよ!」
「……嫉妬っ?」
ゼロがばっと顔を上げた。
目に炎が灯っていたように見えた。
「その師匠ってやつ、レインにキスしてもらえたんだろっ?オレでも滅多に…レインからキスされたこと無いのに…。うらやましいにもほどがあるだろっ!」
うぉおおおお、っとでもいうようにゼロが頭を抱えて嘆いた。
オレは…、オレは呆れてものも言えなくなった。
とりあえず、あれだ。
ゆいいつ自由に動く足でその横っ腹を蹴飛ばしてやろうかと、まず思った。
すんでのところで思いとどまって、なんとか心を落ち着かせる。
「よく聞け、バカゼロ」
どうにか起き上がってまっすぐにゼロを見つめる。
「その憧憬のキスは、オレが自分から好きでやったわけじゃない。師匠に無理矢理やらされたんだ」
一瞬だけ生じた緩み。
オレはそれを逃さずにゼロの手から逃れた。
ゼロの首に自分の腕を絡めて、一気に距離を縮める。
キスしてやった。
5秒も持たなかったけど、ゼロの唇に自分から触れた。
「オレが自分からキスしたくなる相手は、ゼロだけだ」
今なら恥で死ねる!
顔が頬を中心に熱を帯びてくる。
頬を溢れ出て首へ耳へ熱が流れていく。
ろうそくはまだ点いている。部屋はまだ明るい。
見えているとはわかってるけど、思わず顔を逸らした。
おずおずとゼロがオレの腰と後頭部に手を回してきた。
顔を上げると真っ赤になったゼロがいた。
「トマトみてぇ」
「お互いさまだろ」
ぎゅっとゼロが抱きしめてきた。
真っ赤な耳が青髪の間からのぞいてた。
ゼロからすればオレの耳も同じ状態なんだろうけど。
耳元にゼロの声がする。
「やばい、すげー嬉しい」
「単純バカ」
「ほっとけ、今さらだろ」
オレは自分からベッドに沈んでいく。
ゼロもオレに合わせてゆっくりと覆いかぶさってきた。
「ほら、次、いってみろよ」
「レインに先をこされたよ。それにさ、最後だ」
「もう一度、やればいい。それにいい時間じゃねぇか」
窓からのぞき見えた月は結構な位置にある。
ゼロもオレの視線をたどって頷くと、サイドテーブルのろうそくを消した。
「このろうそくしか今は消せないぞ」
「じゅうぶん。後のろうそくは時間がたてば消える」
ゼロは満足げに笑った。
オレは挑発的に微笑んでみせる。
「ちゃんと覚えてんのか?」
「もちろん。単純すぎて、忘れるはずがない」
「まあ、オレでもだいたい予想がつくけどな」
小さく笑いあった。
ゼロの顔が徐々に近づいてくる。
くっつく直前、息と息が交じり合う距離でゼロが口を開いた。
「<愛情>。もしくは……<愛してる>」
「なあ、なんで急にキスの意味なんて調べてたんだ?」
そうたずねてから、冷えた水を一口。
乾いたのどに通る感触が心地よい。
ゼロは一気にコップを呷ってから答えた。
「んー、昼間のさ男女がいただろ。あの注目浴びてた馬引いた騎士とレディ」
「そういやそんなの居たな」
「興味深そうにレインが見てたからさ。
そういうのが好きなのかと思った」
「はあっ?」
あんなこっ恥ずかしいことを?
オレは頭のイカレた野郎でもないし、ロマンチストでもない。
「オレはただな…呆れて見てただけだ」
「なんだー」とゼロは苦笑いした。
コトン、と空になったコップがサイドテーブルに置かれる。
「オレはてっきりそうなのかと…。それじゃあ、イヤだった?さっきの」
そんなの聞かなくても分かるだろ?
オレは答えの代わりに起き上がってほおにキスしてやった。
ゼロは嬉しそうに笑ってキスを返してくれた。
「オレは疲れてんだ。そろそろ寝ようぜ」
「おう。んじゃ、おやすみ」
額に慣れた感触。
おやすみの<あいさつ>、ってか。
ゼロが気取ったマントを着て、装飾された剣を持って、
かしこまった口調で話すなんて望んでない。
けど、こういうのも悪くないな。
悪くないというか…。
「なあ、レイン」
珍しくまじめぶった声。
暗闇に慣れてるオレの目はすぐにゼロの顔を至近距離に発見した。
「おまえは騎士になれないって言ったけどさ、レインのためだけの騎士にはなれるだろ」
何を急に変なことを言い出すのか。
オレは呆れながら軽く目の前の頭をはたいた。
「ばーか。いつからロマンチストになったんだよ」
「さあ?かっこつけたいだけかもな。
けど腕は確かだろ?絶対守ってみせるって」
「オレはおまえに守られなくても、じゅうぶん強い」
否定できず、ゼロは小さく肩を落とした。
まったく…。バカゼロ。
「かっこつけなくていい。ありのままのゼロがいい。バカゼロのままでいい」
うわっ、マヌケ面。
パチパチとゼロは何度も瞬きを繰り返してる。
オレも相当マヌケかもな。
こんな歯の浮くような言葉を言うなんて…っ。
突然、ゼロが抱きしめてきた。
「最後のひとつは腑に落ちないけどさ、すげー嬉しい」
「『嬉しい』ってさっきも聞いた」
「おう。今日は辞書とあの羞恥心の足りない男女のおかげで、レインの内面をいっぱい知れた。感謝しなきゃだな」
「オレもひとつおまえの内面を知ったぞ」
「なんだ?」
「おまえの前で師匠の話は厳禁だってこと。あー、あと、大バカ野朗だってこと」
「『大バカ野朗』は前から知ってたんじゃないのか?」
「自覚あんのなら直せよ」
「『バカゼロのままでいい』んだろ?」
得意満面でゼロが言う。
邪気がないのがさらにたちの悪い。
「…もう好きにしろよ」
「呆れた?」
「わかってんのなら聞くな」
清々しい笑顔を浮かべてもう一度抱きしめてくる。
オレも腕を回してやった。
ゼロが騎士になるなんて望んでない。
けど、<意味のこもったキス>は悪くない。
悪くないというか…すごくいい。
すごく今、幸せかもな。
あったかい腕の中、ゆっくりと眠りに落ちて……。
「じゃあさ、心も繋がったことだし、もう一回体も繋げようぜ」
は?落ちかかっていた意識が一気に覚醒する。
なんてこと言いやがった、コイツ?
目を開ければ回してきていた腕を解き、オレの上に覆いかぶさったゼロ。
さっきと同じ邪気一つない清々しい笑顔。
ふっ、
「ふざけんな!オレは疲れてるって言っただろ」
「いや、だってさ。今までにこんなに心が繋がったことなかったし…」
「それだけでじゅうぶんだろ」
筋肉バカのゼロと違ってオレは体力の限界。
おまけに負担の差がオレにはありすぎるだろ。
なのにゼロはのん気に笑う。
「心もここまで繋がったんだ。体ももっと……」
バッチインッ
オレはヒリヒリする右手を振りながらベットを降りた。
床に自分の衣服をみつけて拾い集める。
だるい。
「レ〜イン〜」
情けない声。
振り返るまでもない。
背後でゼロは左ほおを押さえ、情けない面してる。
動く気配。
片手をとられ、手の平に熱くて柔らかな感触。
「…<お願い>のキスでもだめだ」
「レイン、そりゃねーよ……」
振り返ると律儀に片膝をついていたゼロが肩を落としていた。
もう一度、同じ場所にキスされる。
しょげるなよ、まったく。
だるさを堪えてしゃがんだ。
「また明日、だ。バカゼロ」
前髪を押しのけて額に口付ける。
顔に掛かる髪がくすぐったい。
また抱きつかれそうになって、なんとか避けた。
「レイン…」
顔が熱い。
今日はらしくないことをやりすぎだ。
服を着るのはやめて自分のベットにさっさと入った。
頭からシーツを被る。
布越しに、頭へ唇の感触。
「おやすみ。明日は今日よりもっとすごい夜にしようぜ」
楽しそうなゼロの声。
それ目掛けて拳を振り上げたが、当たらなかった。
代わりに笑い声。
ムッとして顔を出すと、額にキスが降ってきた。
「愛してるよ〜、レイン」
オレは、
「バカ。それならこっちだろ」
ゼロにキスした。
得意げに微笑んでみせる。
ゼロは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに嬉しそうに笑った。
そのままゼロは大人しく自分のベットに戻っていった。
あの男女を恥知らずとオレ達は呆れたけど、
今のオレ達のほうがよっぽど恥を知らないようだ。
■□■□NGパターン□■□■
オレは自分からベッドに沈んでいく。
ゼロもオレに合わせてゆっくりと覆いかぶさってきた。
「ほら、次、いってみろよ」
「レインに先をこされたよ。それにさ、最後だ」
「もう一度、やればいい。それにいい時間じゃねぇか」
窓からのぞく月は結構な位置にある。
ゼロもオレの視線をたどって頷くと、サイドテーブルのろうそくを消した。
「今はこのろうそくしか消せないぞ」
「じゅうぶん」
オレは枕元に手を伸ばした。
指先で数を確かめつつ握り締め、すばやく腕を振りかぶる。
カカカカカカカカカカッ
一気に部屋の明かりが落ちた。
真っ暗闇の中、遠慮がちにゼロが口を開いた。
「何したんだ?」
「ダーティフィーバー。便利だろ?」
「そうだけどさ、いつもそんな所に短剣を…。
というか、物騒というか…いや、それより宿屋の主人に申し訳ないな」
ろうそくの明かりの部分を貫通して、壁に突き刺さった短剣。
ゼロはなぜだか引きつった笑みを浮かべた。
「…。ごめんレイン、今日無理だわ」
「はあっ?ここまできて逃げんなよ!」
便利だけどさ…このタイミングでそれはなー…(by.ゼロ
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2008年以前の駄文。シーフの名前をフェシスからレインに変更。見た目と設定は同一設定シリーズの二人だけど性格がすこし違うかも。
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